さくらが散る日には


息を呑むことしかできなかった












少し伸びて目にかかった烏の濡れ羽色のような髪は、あたりが一面桜色のせいか、より際立っていて…

(ああ、こういう人を“美青年”っていうんだな)

目を閉じて眠っているだけで絵になるような端正な顔立ちの“青年”だった。

さっきまで見惚れていたはずのこの桜の大木でさえも、この美青年のために今ここに存在しているのではないかと思わせるほどだった



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