ナミダ列車
4月の半ばには、最近はすっかりインドアになっているヨータを引っ張り出してフラワーパークを訪れた。
ヨータは、部活、部活、部活、自主練、ランニング!のストイックな毎日を送っていたとは思えないくらいに外に出なくなった。
「悩みますね、いろはさん」
「うう〜ん、ヨータはどれがいいと思う?」
それに、デッサンする花をどれにしようか目移りしてしまって描きはじめるまでに1時間かかったことを呆れ笑いされたものだ。
「はやく決めなよ」
「だだだ、だって!」
それでも付き合ってくれるのだからヨータは優しい。
クラスの女の子たちからも人気な彼は、誰にだって優しいのだ。
小学生や中学生の頃とは違う。周りだって異性として意識した目を向け始める。だから、こういうのは幼馴染の特権。
「なんてね、嘘。俺、ここに座ってるから好きなだけ描いてきな」
ポンポン、とヨータは私の頭を撫でて微笑んだ。サラリ、と落ちてくる私の短い黒髪を丁寧に耳にかけてくれるこの人は天然スケコマシだと思う。
彼の指先に全神経が向けられる。
私の気持ちなんて知らないヨータは、整った顔を傾けて私のことを覗き込んでくる。
「ん、なに?」
透明感のある瞳は、光に混じっていまに消えてしまいそうで妙に切なくなった。
「……なんっでもない」
やっぱり泣きそう。
────ちょっとだけでいい。
彼の近くでありたい……だなんて、欲が生まれはじめた。