ナミダ列車
実はこんなことをヨータは何回もやっていた。電車に乗っている時、東武日光駅に着いた時、戦場ヶ原を歩いている時だって。
自分の身に染み込ませるかのようにそれを確かめていた。
「ありがとう。いろは」
「……えっ、と…」
「本当に、君に出会えてよかった」
「……えっ…!」
不意に視線が私に向けられ、ドキッとしてしまった。
以前はこんなんじゃなかった。いつからだろう。なにかの悟りでも開いたのか、最近のヨータは妙に大人びているように感じる。
一歩先を見通した、独特な、雰囲気。
「伝えたいこと、あるって言ったよね」
「……ひっ、う!」
「それ、俺から言ってもいい?」
彼からはいつもの柔軟剤の香りがした。
伏し目がちのヨータは、長い前髪を風に乗せてただジッと私を見つめてくる。
分かりやすいくらいに脈拍があがった。今日この日にヨータに告白しようと決めていたことを急に思い出したんだ。
「いつまでも夢を追いかけあいたい」
「…うん」
「いろはがうまくいかない時には、俺が支えて助けてやりたい」
「……うん」
「君が俺を救ってくれたように、俺もいろはの力になりたくて…」
「……うん」
「でも…。いや、だからこそ、とても大事で大事で仕方ないいろはだからこそ────知っていてほしいことがあるんだ」
ヨータが喉を鳴らす。
大事で大事で仕方ない。それは私にとってすごく嬉しいはずの言葉。
それなのに一転して嫌な予感がした。声のトーンに、真剣な眼差しに、上がっていた熱が不思議と冷めてゆく。
ヒュウ、足元から吹き付けてくる風は妙に冷たく思えた。
「俺は、あと3年しか生きられない」