桜色の涙
無我夢中で走った。もう何も考えたくない。何も見たくない。
どうして。ねぇ、どうして?俺はこんなにも星那のことが好きなのに。
「待ってください、広瀬くん!」
さっきも通った道を引き返して少し息をついていると、後ろから下駄の音と聞きなれない大声が聞こえてきた。
今のは小谷さん?彼女があんなに大きな声を出すなんて驚いた。
「広瀬くんにはっ、私達がいます」
息を切らしながらそう伝えてくれた。……もう、俺は何をしていたんだろう。
大切な友達の前でこんなことをして、しかも女子にこんなことを言われるなんて。
「そうだよ!友達がいれば怖くないって!」
自分だって辛いはずなのに矢代さんもそう言って励ましてくれた。
そうだよね。友達がいれば怖くない。そう思っていた俺は “ 悲しい嘘 ” に気づくことができなかった。