桜色の涙
「待ってよ!ゆうだっ」
「やめて!」
江崎くんを呼び止めようとする矢代さんの手を思いきり掴んだ。
我に返って見ると、矢代さんは傷ついたような顔をしていた。隣の小谷さんも悲しげな表情を浮かべている。
「ごめん、もう俺─────諦めるよ」
こんなこと言いたくなかった。
彼女の笑顔のためならなんだってできた。彼女が幸せでいられるなら自分の身を滅ぼすことだってできた。
それでも星那は、俺じゃダメなんだ。
それなら俺に残された選択肢はただひとつ。
いつまでも「好き」と言っていたって迷惑になる。お互いに前に進めないだけ。
────俺は諦めるしかないんだ。