桜色の涙

「っていうか、星那だって広瀬と浮気しているんじゃねーの?」


……え?俺と星那ちゃんが浮気なんて、すごい誤解をしている気が……。



「これはたまたま。それに私が好きなのは……」


「星那ちゃん、行こう」


気づけば彼女の腕を掴んでいた。


『私が好きなのは……』


この言葉の続きを聞きたくなかったから。



ねぇ、星那ちゃん。好きだよ。江崎くんよりも好きな自信があるよ。


自分を傷つける人を好きでいるよりも、俺にしなよ……。


口には出せないけど膨らんでいく確かな想い。もう黙って見てはいられない。



「もういいから、早く行こうよ」


お願い。もう江崎くんの方へ振り向かないで。このまま俺のことだけ見ていてよ。


「じゃあな、星那」


口を開いたのは江崎くんで、それは別れを告げる言葉だった。
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