糞蟲飼いメイデン
第一羽『魅呑蟲』
『人気が欲しい。』

 眼前の小肥りな男が必死に何かを語ってるのを眺めつつ、私はそんなことを考えていた。

 人の気と書いて『人気』。
 一般に不特定多数の他者からの羨望や信頼をさす言葉だ。

 オレはとにかく『それ』が欲しい。
 欲しかったのだ。

「ねぇ聞いてる?もうね、キミらに投資してる身になって欲しいと思うわけだよ?ぶっちゃけもうキミら『ダーティーズ』は伸びはないんだからさ、それにそれなりのギャラも向こうも払うって言ってるわけなんだよ?だからこれはキミにも悪くない話だと思うん」

 ごちゃごちゃと何かを語る自称マネージャーを名乗る男は数時間前、ファミレスに呼び出してきたと思ったらオレらのグループ『ダーティーズ』を解散しろと言ってきた。

「それに他の二人はともかくとしてキミについては向こうの社長がえらく気に入ってね、条件の良い仕事を回そうって言ってるんだ。まぁそれも僕らの会社の信頼の」

 『ダーティーズ』は所謂地下アイドルってヤツで今の今までそれなりに活動してきた。

 『アイドルでもうんこする』をコンセプトに下ネタ満載の曲を歌い続けるとかいうイカれた方針で結成されたアイドルグループであり、それもあってか何度か深夜番組に出たことだってある。

 最初は人気も悪くなく、事務所も対応がよかった。

 しかし結局求められるアイドルってのは清き偶像である。

 結局、最初の内の人気ってのは珍しいモノ見たさであり、それは続く代物じゃなかった。

 CDもグッズも鳴かず飛ばずで在庫を抱えて寧ろマイナス。

「いやぁ悪い話じゃないと思うなぁ?キミならその道のカリスマにだってなり得るって向こうの社長も言ってらっしゃるんだよ?それに多く男性に求められると言う点ではアイドルと変わらないんだしさ?」

 だからただ解散にしたくないからこそ、少しでも取り返したいからこそリーダーのオレにこんな提案をしてきているんだろう。

 オレ達に売れるモノはもう身体くらいしか残ってないって話なんだろう。

「オレ……いや私、アイドルやりたいんです。」

 一応そう言ってみる。
 一人称を本来のを口走ってから仕事用に戻して真剣味をアピールとかしてみる。

「いやいや分かってるけどね?でもアイドルだけが道ではないと思うんだよね?確かに最初はキツイ仕事かも知れないけどなんでも慣れれば楽になるも」

 分かりきっていたが、聞く耳なんざ持たないだろうし持とうともしない。
 もう負債を取り戻すことしか考えちゃいない。

 もし承諾したらきっと『元地下アイドル闇オークション快楽堕ち』みたいなタイトルで売り出されんだろな。
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