雨降る午後に
春陽は、これであたしの姿を確認して、びちょびちょなのに驚いて、タオル片手に飛んできてくれたんだ。
簡単にわかった。
慌てている春陽の姿が目に浮かぶ。
『ばか、何やってんだ、あいつ』
とか、つぶやきながら。
「ごめん、これしかない」
ハッとした。
黒い布の塊と、ドライヤーが押し付けられる。
「10分出てるから。着替えといて」
今度は正面から肩に手を置かれ、部屋側へ押し出される。
「じゃあ」
出てく。
ドアが閉まる。
しまったドアがかちゃんって小さな音を立てる。
…まずい。
あたしの心臓は、何でこんなにフル回転なんだ。
春陽のは好意じゃないぞ。
ただの親切心だぞ。
もしくは、春陽のただのあたりまえの行動でしかないんだぞ。
そのただのあたりまえをされただけで、いちいちドキドキされたら、春陽は迷惑だぞ。