副社長のイジワルな溺愛

「最近、深里さんがすごくかわいくなって、ちょっといいなって……思ってたよ。でもさ、副社長の件があって何もできなかった。俺みたいなサラリーマンと御曹司じゃ比べ物にならないでしょ?」
「そんなことないです! 私、副社長とは本当に何も」
「うん、わかってるよ。深里さんは俺のことを好きでいてくれたんだもんね」

 やっと微笑んでくれた彼に、視界がにじむ。


 ――お願い。好きなんです。どうかこの恋を繋いでください。
 まだ好きでいたいの。もっと知りたいの。たくさん話したいことがあるんです。


「俺もね、今日言っておこうと思ってたことがある。実は、海外に転勤が決まってるんだ」
「海外!? どこに行くんですか?」
「そんなに遠くないよ、マレーシアだから。メールの返事が遅かったのは、そのプロジェクトで結構立て込んでて。本当にごめん」
「いえ、それは気にしていませんので」

 間を取った彼が、またワイングラスを傾ける。
 私もどうしたらいいのかわからなくて、同じように傾けた。


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