副社長のイジワルな溺愛

「深里さんっ!!」

 出社して自席に座っていると、香川さんがやってくるなり、慌てた様子で私に話しかけてきた。


「あ、おはようございます。今日も暑いですね」
「なんで今日に限って、そんなおしゃれしてきたの? 昨日あれだけ注意してって言ったのに」

 ものすごく心配そうにしてくれるのはありがたいけれど、本当に副社長とはなにもないわけで……。


「ちょっと気が向いただけ」
「副社長と特別な関係になったから色気づいたんじゃないかって、先週の一件を目撃してた人からどんどん話が回ってるみたいだよ」
「大丈夫ですよ。そのうち噂なんて消えます」

 噂なんて次から次へと出回るもの。特にうちみたいな大きな会社だと、あの人と誰が付き合ってるとか、そんなものは日常的によく聞く。


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