誰も知らない彼女
由良がなぜ私にいきなり抱きついたのか、ようやくわかった。


なのに、なぜかスッキリしない。


なんでだろう。


由良の言葉に引っかかる言葉があったからか。


それとも他のなにかが気になっているからか。


心の中にいるもうひとりの自分にいくら問いかけてみても、答えは出てこない。


……いや。


スッキリしない理由なんて、もうとっくにわかっていた。


わかっていて、言葉にするのをためらっているだけなんだ。


私って、とんだ嘘つきだね。


こんな人間が親友だったら、由良は私をいじめてバカにすることだろう。


由良の性格を知っているから、思っていることをペラペラとしゃべるのが怖いのだ。


でも、由良の親友である以上は、隠すことなく話す関係でなければならない。


ならば、どうして思ってることをすぐに口にすることができないんだろう。


心の中のもうひとりの私を責めていると、由良が私から体を離した。


そして、私に向けてニッコリと笑う。


「本当にありがとね、抹里。悩みごとがまたできたらどんどん抹里にぶつけちゃうからね。覚悟して待っててよ?」


そう言ったと同時に、由良は両手で拳を作り、そのうちの片方を私に向けた。


片方の拳には、今まで私に言えなかったことや誰にも話さなかった秘密がギュッと握りつぶされているように見えた。
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