あなたしか見えないわけじゃない
「志織、1時間だけ休もう。今日は9時までに病院に着けばいいんだ」
2人でベッドに向かう。
アラームをセットして横になった。
軽くキスをしただけですぐに2人とも眠りに落ちた。

ぴったり1時間の仮眠で目覚める。
洋ちゃんがシャワーを浴びている間にコーヒーを入れる。
手早く卵サンドを作って一口サイズに切っておく。これなら支度しながらでも食べられる。

シャワーから出てきた洋ちゃんはすっきりした顔をしている。たった1時間の仮眠でいつものイケメンに戻っているとは、何ともすごい体力だ。
本当にドクターって大変。
緊急の呼び出しで徹夜で働いても翌日休みになるわけじゃない。そのまま14日間休みなしとかざらにある。
しかも、生命を預かる仕事だ。常に神経を遣う。

早く洋ちゃんの側に戻ってきたい。
この大切な人を少しでも助けてあげたい。

「志織の卵サンドは旨いな。何だろ、何かが違う。味が染みてる」
「ふふっ。ありがと。こっちに戻ったらたくさん作るね」
「ああ。楽しみにしてるよ」

ゆっくりする時間はなく、洋ちゃんの出勤時間になった。

「志織。気を付けて行って来い。すぐにこっちに戻って来るんだからあと少し頑張っておいで」
「うん。最後までしっかりやり切ってくるね」
軽くハグをしてキスをした。

「洋ちゃん、いってらっしゃい」
「ああ。いってくるよ。志織もね」
「うん」

笑顔で見送りができた。
そう、たった2ヶ月でまたここに戻るんだ。
帰る場所がある幸せ。
そして、待っててくれる人がいる幸せ。
さぁ、がんばるぞ!




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