あなたしか見えないわけじゃない
リビングに落ち着いて2人で紅茶を飲む。

2年振りに会った久美さんはやっぱり恐ろしく美しい。
肩甲骨まである真っ直ぐで艶やかな髪。
キリッとした美人。
そろそろ35才になるはず。20代とは違う大人の美しさや色気が溢れている。


「もー、洋介ったら強引なんだから。で、しおちゃんは拉致されたの?」

ら、拉致だなんて…。
「ううん。ちょっと…辛くなって洋兄ちゃんにSOSしたの」

「ふぅん、なぁるほどね」
うんうんそうかと頷いた。

「しおちゃん、洋介はたぶんしおちゃんをしばらくアパートに帰すつもりないわよ」
久美さんは困ったように笑う。

「えええ、何で?」

「こんな様子のしおちゃんを洋介が放っておくはずないもの。あきらめて、私と当面必要なものを買い物に行こうか」

そう言うと洋兄ちゃんの書斎に入ってすぐに出てきた。
手にはクレジットカード?

「洋介から買い物を頼まれてるの。支払いはこれ」
ニヤッと笑ってカードをひらひらさせた。


大型ショッピングセンターで下着から洋服、メイク用品まで買い込んだ。
「久美さん、こんなにいらないよー」と主張する私を無視して久美さんはどんどん買っていく。

「いいのよ、どうせ洋介の支払いなんだから」と恐ろしいことを言った。

「久美さん、私の夏のボーナスが飛んでっちゃうから!」と言う私に
「だから、支払いは洋介だから大丈夫よ。しおちゃんは気にしないで」
と笑った。
「さて、プリティーウーマンの続きをするわよ」

いえいえ、気になるし、全く笑えないよ。




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