あずゆづ。
保健室を出て、生徒玄関につき靴を履き替える。
ゆづくんは無言で私を置いて先に玄関を出てしまった。
校門を出てすぐ、ゆづくんは私の家とは反対方向を進むものだから、思わず「家、こっちです」とゆづくんに声をかけるも、舌打ちで返されてしまった。
けど、ゆづくんは不機嫌そうな顔をしながらも、ちゃんと私の家の方向に向かって歩き出してくれたので、なんだかんだ言いながら送ってくれる優しい人なんだなあと。
口は悪いけどいい子だから…という先生の先ほどの言葉も少しだけ納得できる。
ただ口は悪すぎると思う。
校門を出てしばらく、私たちは無言だった。ズカズカと歩くゆづくんのスピードに一生懸命ついていこうとするも、なにせ貧血で倒れた体だ。ついていけるはずがない。
「ちんたらしてんじゃねえ!!」
そんな私に痺れを切らしたのか、またもゆづくんは鬼の形相でこちらを振り返り怒号を浴びせてきた。
「そんなに怒鳴らないでよ~!!」
そんなゆづくんが怖くなった私は、半泣き状態になりながらゆづくんの元へ駆け寄る。
……のが、いけなかった。
―――ぐら…っ
「……っ!?」
やば。
まだ、走るのはきつかったかもしれない。
た、お、れ………っ
「!!」
どうしようもできないと思ったとき、ぎゅっと目を閉じた。
そのとき、ふわりと何かに抱き留められ、私は倒れずにすんだ。
「……!?!?」
目が、ちかちかする。
まぶたを開いても、視界はちかちかするばかりですぐには状況を理解できなかった。