あずゆづ。

どうしよう、困りました。

こんな微妙な苦笑いでしかかわせない…!!


ていうか王子……!?
この至近距離はまずいですって!!!

ただでさえ回ってない私の思考回路……マジでショートしちゃいますよ……!!!


「俺のこと、好きじゃなくてもいいよ」

「だからほんとにショートしちゃ……え!?」


優しく呟かれた言葉と共に、コツンと、ゆうちゃんの額が私の額に軽く触れる。

私と黒の王子の、おでことおでこがくっついている状態。


下を向いているせいか、ゆうちゃんの長いまつ毛がすごく綺麗で。


こんな状況なのにも関わらず見とれてしまって、次のゆうちゃんの言葉がすっと心に響いた。


「それでも、付き合ってほしいって言うのは、やっぱりわがまま……かな」

「………っ」


ゆうちゃんの、小さく呟かれた切ない声がすっと入ってきては、頭の中で小さくこだました。

ねえ、と、ゆうちゃんの指一本一本が私の指の間に入ってきて、きゅっと握られる。

こんな、こんなのって……どうしたってドキドキしてしまうに決まってる。


「絶対、惚れさせる」


とくんっと、胸が鳴っては小さく跳ねた。


「ゆ……」


ゆうちゃんの顔が少し離れたことで、今彼がどんな表情をしてるかやっとわかった。

いたずらっ子のような表情でも、悲しそうな落ち込んだような表情でも、王子様のようなキラキラした笑顔でもない。


……自分の想いを真っ直ぐに伝えようとしてる、男の子の顔だ。


もう、何も考えられずただ真っ赤な顔をした自分が映っている、彼の黒い瞳に。

吸い込まれそうだなぁ……なんて呑気に思っていたら。

本当に優ちゃんの顔が、だんだんと近づいてきていることにふと気づいて。



「……好きだよ」



そんなこと、そんな声で言われて。

ぴりりと体全体がしびれて。

しびれる体とは裏腹に、頭の中はとろんと溶けそうに甘くて。

そんな、すべてが初めて味わう感覚に、思わず目を閉じたときだった。


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