あずゆづ。
……どっちかなんて、わからない。
だけど、会ったら何か、変わる気がして。
ゆづくんに会えば、この不安でいっぱいの嫌な気持ちが、変わる気がして。
急いで教室を出ると。
「っ」
教室のドアに背中をつけてだるそうにしているゆづくん。
ま……待っててくれた……?
「おせーぞメガネ」
ゆづくんがいたことで、さっきまでのドキドキが、また違ったドキドキに変わったのがわかった。
「……う、うん…ごめん」
本当に、なんでこんなに、なにかある度にドキドキしてるんだろう。
私の心臓、『あの日』からちょっと、おかしいんだ。
ずっとずっと、ゆづくんの筋肉を見てドキドキしてるんだと思ってた。
ゆづくんといても
腕とか背中とか、
ズボンをまくっている時なんかはそれこそふくらはぎとかばっかり見てたはずなのに。
「……」
今ではすっかり、気づけばゆづくんの顔しか見ていない。
「? なんだよ人の顔ジロジロ見て」
「な、んでもない!!」
そして、目が合いそうになると、恥ずかしくなってついそらしちゃうんだ。
さっきまでの、ゆうちゃんのことなんて、もうすっかり私の中から消えてなくなってしまっていた。
それがどうしてかなんて、今はまだわからないし、わからなくていい。
ただ、何も考えず、このままこうしていつも通りでいたかった。