あずゆづ。


教室の外に出ようとした時。


「……!」


やっと、ゆうちゃんの存在に気づいた。

女の子に囲まれすぎて全くわからなかったから、こうもいきなり目の前に現れられると、回避のしようがない。


「……あ、え…と……」


この間の、校舎裏でのことを思い出し、ボボボッと一気に顔が熱くなる。


……だからいつも通り。

まっすぐ、ゆうちゃんの顔が見れなくて、私はまた、すぐに下を向いてしまった。


「……まだ、返事は決まってないみたいだね。……その調子じゃ」


声の調子で、ゆうちゃんがふっと微笑んだのがわかった。


私は、申し訳ない気持ちと、恥ずかしい気持ちで、なんて言ったらいいかわからなくて。

そのまま、ただうつむいていることしかできなかった。

はやく、この場から立ち去りたくて、ぎゅっと拳を握る。


ちらっと視線を教室の外に向けるが、そこで待っていてくれていたはずのゆづくんの姿が見えない。


「……ご、めん!! ゆづくんとこ、行かなくちゃだから……!!」


そう言って、逃げるようにゆうちゃんの横を通り過ぎようとしたときだった。


「……俺、待ってるからね」

「っ」


すれ違い際に、ゆうちゃんはそうつぶやいた。


「梓ちゃんが俺のこと好きになってくれるの、待ってるから」

「……っ」


私は何も言わずに、振り返らずに。

……そのまま歩き続けた。

むしろ早歩きになっていた。



ゆづくん、きっと私のこと置いて行っちゃったんだ。


早く、早く追いつかなきゃ。


……なんだか、不安な気持ちになった。

胸がドキドキしてるけど、これは、嫌なドキドキだ。
手のひらには汗がびっしょりかいている。


なんでこんなに不安なんだろう。



ゆうちゃんに会ったから?

ゆづくんに置いて行かれるから…?


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