過保護な騎士団長の絶対愛
 ――ヴァニス王国の第一王位継承者、つまり、あなたのお兄様ね、彼が動き出したわ。

 ユリウスはごくりと生唾を呑み込む。どんな現実もすべて受け入れなくてはならない。そのシェリア王国の王子が、ガイルの姿と重なったが、早合点しては冷静な判断ができなくなる。しかし、シェリア王国が亡国ヴァニス王国の分断国家であることを考えると、まさか、という猜疑心がユリウスの気を乱す。


「モリス様、その男、名はガイルと申しておりませんでしたか?」

 ユリウスが言うと、モリスは驚いたように目を丸くして深く椅子に座り直した。

「ユリウスよ、何か、心当たりがあるのだな?」

「はい。先ほどイザベルの元へ行っておりました。ララ様の身に危険が及んでようとは知らず……」

 自分がイザベルのところへ行かずに、ララについていればと思うとユリウスは口惜しい気持ちで拳を握った。

「ガイル・レオットと名乗っていたが……正式名称はガイル・レオット……スティーガ、だな?」

 モリスもガイルがいったい何者なのか検討をつけていたようだ。
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