過保護な騎士団長の絶対愛
 黒いマントを翻し、ユリウスはあたりを息を潜めて先方を窺う。長年訓練してきた経験と感覚を研ぎ澄ます。

 百戦錬磨。

ユリウスにとって城内へ潜入するのはたやすかった。城の正面門には兵士が数人警護でうろうろ行ったり来たり巡回していたが、城には必ず裏門がある。こちらにも兵士がふたりいたが、遠くに石を投げて物音で気を引いた後、兵士の隙を狙って城への侵入に成功した。しかし、厄介なことに、この城内の内装はすべて石造りになっていて、足音がわざと響くような造りになっていることだった。


 ガイルを先に討つか、ララを先に救出するか、ユリウスの頭にふたつの選択肢が迫られた。

 くそ――。

 冷たい石造りの部屋でララがすすり泣いている姿が脳裏をよぎった。かつての自分と同じような目に遭っているのではないか、そう思うと冷静でいられなくなる。

 廊下の角を曲がろうとした時、こちらに歩いて向かってくるひとりの兵士が目に入った。

ユリウスは出かかった身体を瞬時に引き戻して背中を壁に押し付ける。

 とにかく、城内の情報が欲しい。

 ユリウスは、兵士がぎりぎりのところまで歩いて近づいて来るのを息を潜めて待った。そして、兵士が自分の存在に気づかず、極限まで近づいてきた瞬間を狙って、ユリウスは素早く兵士の背中へ回ると、廊下の壁に背中を押し付けて口を手で塞いだ。
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