過保護な騎士団長の絶対愛
「ひっ――!」

「ガイル・レオット・スティーガの玉座はどこだ?」

 ユリウスのすごみに兵士は声も出せずに目を見開いて喘ぐように呼吸する。

「早く言え!」

 塞いだ口を解放した途端、泡を吹いて気絶する兵士を、ハァとため息づいて見下ろした。

 この程度で気を失ってしまうとは、おそらく、この国の兵力はさほど身構える必要もなさそうだ。

「ッ――!?」

 するとその時、呆然としているユリウスの背後から鋭く空を切る音がして、瞬時に飛び退く。

「貴様、侵入者か!?」

 いつの間にかユリウスの背後に回っていた兵士が、剣の切っ先をユリウスに向けている。その兵士の手にしている剣はレイピアと呼ばれる細身の刺剣で、振りかぶることなく刺して攻撃するものだ。

この狭い廊下で、ユリウスが携えているような長剣を振り回すには、いささか不利だった。おそらく、この城はそういった狙いがあるのだろう。

「いたぞ!」

 侵入者の気配を察したのか、数人の兵士が廊下の奥でユリウスを指さしてさらに仲間に声をかけようとしている。

 気づかれたか――。

 剣が振るえない狭い場所にいつまでもいるわけにはいかない。ユリウスは交戦することをやめ、兵士と反対側の廊下へ走った。
< 146 / 203 >

この作品をシェア

pagetop