過保護な騎士団長の絶対愛
「ヴァニスが滅んで父上が死に、母上もどこかの国へ亡命したと聞いて、俺はいずれヴァニスを再建しようと考えた。しかし、お前が生きていると知って、いつかお前から襲撃されるのではないかと、ならばこちらから消しに行こうとした。ずっと探していたが、まさかコルビスにいたとはな」

 ユリウスは幼少の頃、自分を蔑んだような目で見てきた少年の姿を思い起こした。小生意気そうな顔をしていたのを思い出す。そんな彼も、ずっとずっと幼いながらに愚かな嫉妬に狂っていたのだと思うと、哀れな気持ちにさえなる。

「ガイル、貴様は本当に馬鹿なやつだな。こんな男が、俺の兄だと思うと虫唾が走る。お前が長年企んできたことが、いかに愚かなことだったか、せいぜいこの監獄で思い知るといい」

「うるさい。もうその生意気な面見せるな、どうせここは長いんだ。もう行ってくれ、疲れた」

 片手をひらっとさせてガイルはもうこれ以上話すことはない。というようにその場にごろんと背を向けて寝転がった。

 ガイルは異母兄弟とはいえ、この世で血を分けた唯一の肉親だ。それが疎ましいような、そうでないような複雑な心境だった。

 ユリウスは、去り際にもう一度ガイルを一瞥すると、その場を後にした。
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