過保護な騎士団長の絶対愛
月光下の舞踏会
 季節も四月に入り、今月の大きな催し物は、コルビス国王主催による仮面舞踏会だ。


 そしてついにその当日の夜がやってきた。


「はぁ……」


 ララは今から侍女に着せられる藍色のドレスを目の前に、自室で大きなため息をついていた。

こんな窮屈なもので長時間締め付けられるのかと思うと嫌気がさした。今からでも城を抜け出してしまいたい衝動に駆られるが、さすがにもうそれが許される年齢でもない。

あと三時間もすれば舞踏会が始まってしまう。どこからともなくワルツの演奏が聞こえてくる。きっと音楽隊が練習でもしているのだろう。軽快な音楽はいつもならステップを踏んで踊りだしたくなってしまうのに、気が乗らない舞踏会のことを考えるとそれも耳障りだった。


「ララ様、着替えのお手伝いに参りました」


「あ、うん。お願い」


 ララの専属侍女であるステイラが深々と頭を下げながら、数人の侍女を引き連れて部屋に入ってくる。ステイラはララの乳母だった侍女だ。

生まれた時からララを知るステイラは今年で五十になる。ララの性格も重々承知で、ララを厳しく躾けてきた……つもりだった。が、淑女と呼ぶにはまだほど遠いララに、最近ため息が増えてきている。
< 66 / 203 >

この作品をシェア

pagetop