過保護な騎士団長の絶対愛
「自分でドレスくらい着られるのに……」


 子供じゃないんだから、とララがむくれると、黒髪を結い上げてキリっとしたステイラが言った。


「ダメですよ、コルセットはちゃんとお手伝いして着用しなければ、美しく着こなせることはできません」


 コルセットとドロワーズという下着のコンビを鏡の前で着せられる。


「く、苦しい……」


「ララ様、我慢してくださいま、せっ」


「うっう」


 ステイラが語尾に力を込めると同時にきゅっと紐を締められると、思わずくぐもった声が口から飛び出してしまう。


 ふんだんに使われたレースがまるで蝶のようだ。ララは長い時間鏡の前で立たされて、鎧でも装着されていくかのような感覚を覚えた。


 背中の大きく開いたドレスに胸を強調させるように腰を絞られる。シルク素材の布地には、スパンコールやら真珠やらが豪華に装飾されている。窓の外を見ると先程まで夕暮れだったのがすっかり日も落ちてしまっていた。


 今日は朝からユリウスを見ていない。舞踏会の警護のため、部下の指揮を取っているのかもしれない。
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