過保護な騎士団長の絶対愛
花びらも一枚欠けていて、ララが身に着けるにはふさわしくない髪飾りだったが、ユリウスには、そんな欠陥も凌駕するくらいララは輝いて見えた。

 しかし、この後に出会った男がどうもキナ臭かった。よからぬことを考えている人間は、目を見ればわかる。ユリウスは、姿を見失わないようにずっと壁際でふたりを見守っていた。すると、あろうことかその男はララを外に連れ出した。

いったいどこへ連れ出すのか、とユリウスの警鐘が一気に鳴り響いた。間隔をとりつつ、ララの後を尾行していると、派手なドレスとマスクを身に着けたどこぞの女に声をかけられ、そうこうしている間にふたりを見失ってしまった。王都でララを見失ってしまったばかりだというのに、ユリウスは自分のまたの失態を悔いた。

庭園に出てしばらくするとユリウスはようやくふたりを見つけたが、どうも雲行きが怪しかった。まさか、自分がここで剣を交えるとも思っていなかったが、その男からは異様で嫌な予感しか感じられなかった。そして、その男はユリウスに言った。


 ――ヴァニス王族にしか許されていない剣の構えを、どうしてお前が知っている?


 それはユリウスにとって衝撃的な言葉だった。

 ヴァニス王族にしか許されていない剣の構えだって……? なんだそれは――。


 そんなこと知るはずもなかった。その構えは、ユリウスの癖のようなものだった。


 まさか、自分の構えの癖にそんな意味があろうとは――。

 そのおかげで、あろうことか敵に隙を見せてしまった。その結果……。


 ユリウスは右腕にできた一筋の切り傷を忌々しく見つめた。ララを心配させまいと、かすり傷とは言ったものの、実際にはかなり深手を負っていた。ララが咄嗟に止血してなければ、今頃どうなっていたかわからない。
< 94 / 203 >

この作品をシェア

pagetop