あなたの隣にいたかった
「すいませんっ」


沙羅と話していて前方不注意だった私は誰かとぶつかった


「いや、こっちこそ悪い」


声の主は思った以上に背が高く、180はある


見上げた先の顔は今までに見たことのないくらい整っていた


くっきりした二重に長い睫。筋の通った高い鼻。


「さ、坂口陽太!?」


「沙羅、知り合い?」


男の子を指して叫んだ沙羅に尋ねる


「美里知らないの?今、人気急上昇中の若手ナンバー1モデルだよ!今度、俳優デビューもするんだよ!私、すっごくファンなんだ!」


息を荒くする沙羅に若干引き気味になる


「ありがとう。そんな風に言ってもらえて嬉しいよ」


笑顔で沙羅に微笑みかける


私にはその笑顔が本物ではないことがすぐに分かったが、沙羅は完全にメロメロだ


沙羅に呆れていると、朝のお母さんの言葉を思い出した


「あなたが坂口陽太?今日うちに引っ越してくる」


「…君は?」


明らかに怪訝そうな顔をするモデル


「私は谷原美里。こっちが親友の安藤沙羅」


「美里…。」


私の名前を呟き黙り込む


「君、10歳の頃どこに住んでた?」


そう言われて少し嫌な汗が出る


「あー…。ごめんなさい。私10歳より前の記憶がないの…」


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