王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
ふたりの気持ち
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 太陽の高い位置からの陽射しは春を押し退け、すでに夏を匂わせる。

 シロツメクサがまだ風に揺れてる裏庭で、マリーは膝を抱えて顔を伏せていた。


 エレンにあんなことを言われて、ウィルはもう、ここへは来てくれないかもしれない……


 厳しくぶつけられた言葉に素直に従っているのか、この屋敷が煩わしくなってしまったのか。

 ウィルは先週、ここへは現れなかった。

 最後に、彼をこの場に残してきてから、二週間が経った。

 今日も彼は来てはくれないのか。

 きちんと謝罪も出来ないまま別れてしまい、彼の気持ちがわからなくて不安が募る。

 フレイザーの生ぬるい感触が、いまだ身体に濃く残る。

 マリーは、消えないあの感覚を、ウィルの優しさで上塗りしてもらいたいと思っていた。


 あんな人のところへなんて、嫁ぎたくなんかない……


 なぜ自分なんかが、フレイザーの花嫁候補になってしまったのかがわからない。

 他にも高爵位で素敵な令嬢ならたくさんいるはずなのに。
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