王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
 その立ち姿は長身で、均衡の取れた四肢が彼の優れた容貌を際立たせている。

 胸と腕には革製の甲冑を付け、今は見当たらないけれど、腰に剣を挿すための金具が濃い藍色のマントの陰からちらりと覗いた。

 おそらく誰が見ても、彼が騎士を肩書きとする者だとわかるだろう。

 とは言っても、今十九の年齢で成人でない彼はまだ“見習い”という札を下げたままだ。

 駆け寄るとわかるサファイアの瞳は、マリーアンジュを捉えるなり美しい青色をやんわりと細めてくれる。

 マリーは、薄い金色の長い髪を弾ませてウィルを見上げると、たまらないという思いを小さな手に握りしめて、頬を上気させた。


「ウィルのおかげよっ。あんなに素敵な夜空のショーを見られるなんて!
 本当に素晴らしいお誕生日になったわっ」


 マリーの瞳は、昨夜の流星群をそこに映したようにきらきらと煌めく。


「昨夜はここ数年の間でも本当に素晴らしい流星群だったな。近頃の長雨は、昨日のために夜空を綺麗に洗ってくれたようだったよ」


 そう言うと、ウィルは満足げに微笑んだ。
< 4 / 239 >

この作品をシェア

pagetop