結婚適齢期症候群
「とりあえずパンツだけでいいよ。」

向こうからショウヘイの声が聞こえた。

私がまじまじ見てたのわかったのかしら?

んなわけないけど、顔が熱くなった。

「は、はーい。」

パンツを手に持って、脱衣所に向かった。

脱衣所に背を向けてその扉を少し開ける。

「これ。」

その少しの隙間からパンツを渡した。

「さんきゅ。」

この扉の向こうにいるのはもちろんショウヘイだけど、服を着てないショウヘイ。

わわわ。

なんだか緊張してきた。

すぐに扉を閉めて、リビングに戻った。

ふぅ。

何考えてんの、私。おかしいんじゃないかしら。

一瞬裸のショウヘイを想像しちゃった。

心臓がドキドキしてる。

きっとパンツ一枚のショウヘイがもうすぐ脱衣所から出て来る。

ソファーにゆっくりと座って呼吸を整えた。

こんなに動揺してたら、ショウヘイに何言われるかわかりゃしない。

ガラガラ。

扉の開く音がする。

松葉杖の突く音が近づいてきた。

ゆっくりとその方に顔を向ける。

そこには、もちろん、パンツ一枚のショウヘイ。

「きゃ。」

思わず顔を両手で覆った。

上半身裸の男なんて見るの初めてじゃないのに、どうしてこんなに恥ずかしいんだろう。

シャボンの香りがふわっと私の鼻をかすめた。

「お前、何恥ずかしがってんの。俺、パンツも履いてるし。」

ショウヘイは両手で顔を隠してる私を見て冷静に言った。

「だってさ、やっぱり一つ屋根の下で、男の人がパンツだけなんて慣れてないもん。」

「つい最近まで彼氏いたんだろ?変な奴。」

ショウヘイはクスッと笑った。

そうだよ。確かに、最近までタカシがいた。

だけど、今は・・・。

ショウヘイに私の彼の話をそんな簡単に言われたことに、少し落ち込んだ。

自分の気持ちも言えない。

ショウヘイの気持ちもわからない。

前に進まない恋。
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