結婚適齢期症候群
晩御飯も食べずに帰ってきたから、お腹も空いてるはずなのに何か食べようっていう気持ちが失せている。

私が食欲わかない時って、相当にダメージ受けてる時。

そんなにダメージ受けてる?

ショウヘイがこの場所に帰ってなかったっていうだけで?

これが恋の恐ろしさだ。普段と違うことが少しでもあれば不安の渦に巻き込まれる。

時計を見ると8時半過ぎたところだった。

まっすぐ帰ってきたら、6時半には帰ってるはずなのに。

鞄の中から今日もらってきた自分の茶碗を出す。

恋してる人間が作る曲線のきれいな茶碗、だって。

真っ先にショウヘイに見せようと思って帰ってきたのに。


その時、下に車の停まる音がした。

ひょっとしてショウヘイ?

仕事で何かあって残業してたとか?

リビングの窓のカーテンをどけて外を見た。

車が一台停まってる。

でも、それはタクシーではなかった。

見覚えのある・・・よく役員クラスがお抱え運転手付きで乗る真っ黒なクラウン。

こんなマンションに何の用?

気になってしばらく見ていた。

ぴしっと髪の毛を分けた運転手が出てきて、後部座席の扉を開けた。

誰か出てくる。

松葉杖が見えた。

松葉杖と共に現れたのは、ショウヘイだった。

どうして?

そして、ショウヘイの後すぐに出て来た人影。

髪が長くて、清楚なワンピースを着ている女性。

その女性は親しげにショウヘイの腰に手を当てると、一緒にマンションの階段の下まで歩いてきた。

だ、誰?

心臓が異様にバクバクしていた。

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