結婚適齢期症候群
茶碗を入れて少し重たくなった鞄を持って、電車に乗った。

今日は、ショウヘイは一人で家まで頑張って帰るといって、別で先に帰っている。

いくら松葉杖が慣れたとはいえ、あのマンションの階段はさすがにきついんじゃないかって言ったんだけど、大丈夫っていうからそれ以上は言えなかった。

毎日会ってるのに、今すぐにでもショウヘイの顔を見たい。

そして抱きしめてキスしてほしい。

こんな私って変?

抱きしめられてると安心できた。

ショウヘイが私の元にとどまってくれてるって。

結婚に興味がないって言ってたショウヘイの気持ちはあれから変わったんだろうか。

私に興味がないっていうのは、もちろん変わったよね?

その手や体にショウヘイを感じていないと、やっぱり私の悪い癖ですぐに心配になる。

今を信じようってあれだけ誓ったのに。

だけど、よく考えたら、今はすぐに過去になっていくもので。

今がずっと同じ場所にとどまるなんてことがあり得ないわけなんだよね。

あー、だめだめ。

こんなこと考えだしたら、またショウヘイに言わなくていいことを言ってしまいそうだ。

ショウヘイの待つマンションに近づいてくる。

マンションが見えた途端、思わず走り出していた。

馬鹿だねぇって心の中で突っ込みを入れながら。

玄関の扉を開けて、「ただいま」と言う。

あれ?

部屋は真っ暗だった。

まだ帰ってない?

先に帰るって言ってたのに。

いるはずのショウヘイがいないってだけでこんなにも心配になる。

どこかに寄ってるのかな。

ショウヘイに電話をかける。

すぐに留守電に変わった。どうしたんだろう。暗い部屋の中でぼんやりとスマホの明かりを見つめていた。
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