君のために未来を見よう〜教王様の恩返し〜
4 取引

 期待

フィーが教王庁で暮らし始めてから5日。
大雑把だが、一日の流れがみえてきた。

「レイ様、おはようございます」
フィーが自室のドアを開けると、いつもそこでレイがおすわりで待っていた。
レイは昔からの習慣で、この応接間で寝起きしている。
高齢の前教王のために応接間にベッドを置いたらしいのだが、その配置は今も変わっていなかった。
主が休息を取るベッドの足元でいつも寝ていたらしい。

「今、開けますね」

バルコニーへ続く窓を開けると、レイは外へ飛び出した。その後を小さなボールを持ったフィーがついて行く。
そこで、ボール遊びをするのだ。フィーがボールを投げ、レイが走って取りに行く。それをフィーが受け取って、また投げて……。と、飽きもせず毎朝1時間は繰り返した。
バルコニーと言っても、5階の壁面全体に設置されているため、細長いが運動場のような広さだった。

運動が終わると、次は朝食だ。
廊下にレイ用の朝食が届けられている。銀のトレーに水や肉、小さく刻んで茹でた野菜などが、日替わりで載せられていた。

「さぁ、どうぞ」

トレーを置いたと同時に飛びかかるように食べ始める。毎度のことながら、こういう俊敏な動きにビクついてしまう。
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