ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
「玲ちゃん。昔、私が言ったこと覚えてる」

「どんなに辛いことばかりでも、生きてたら良いことがある。でしたっけ?」

「そう。私もね、孤児だったの。その時にね、施設の先生が教えてくれた言葉なの。良いことなんてあるわけないって、ずっと思ってた。何度も、死のうと思った」


香坂さんが?


「だけど今は、頑張って生きてきて良かったって思う。長い人生、良いことに比べたら、きっと辛いことや苦しいことの方が多い。でも、絶対に死んじゃダメ。生きることを、諦めちゃダメだよ。その先には、何もないから」

「はい」

「分かれば宜しい。じゃ、そろそろ私は失礼するね」


立ち上がる香坂さんを、玄関まで見送る。

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