ミラートリック~キミの優しすぎる愛に溺れる~
「お帰りですか?」


階段の足音気づいたお母さんが、慌てたようにこちらに顔を出す。


「長い間、大変お世話になりました。蓮見さん」

「いえ。こちらこそ」

「こんな素敵な娘さんに育てていただき、本当に本当にありがとうございました」


香坂さんは、お母さんに深々と頭を下げる。


「こ、香坂さん。頭を上げてください」

「どうか。これからも、玲ちゃんのことをよろしくお願いします」

「それって···」


香坂さんの言葉に、お母さんはこちら見る。


「あたしには、ここしか帰る場所ないから」

「そうよね。ここは、玲の家だもん」


瞳いっぱいに涙を浮かべながらも、お母さんは必死に堪える。

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