好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


気にさせないようにと、髪を直しながら努めて明るく聞こえるように言った。


「ほら、お仕事、こんなに抜けちゃって大丈夫なの? 他の職員の人も待ってるでしょ?」
 

黎の背中を押す素振りをすると、黎は「わかったから」と踵を返した。


「夜歩きするなよ」


「そっちこそ」
 

おやすみ、黎がそう言ったので、真紅も同じ言葉を返した。
 

月あかりは昇るのが遅くなっている。


黎の背中が見えなくなるまで見送った真紅は、鞄を抱きしめるようにして部屋まで駆けた。
 

扉を閉めて、そのままくずおれた。
 

黒藤に言われた、真紅のもう一つの本性。

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