好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



(……どっちの差し金だ?)
 

病院を出て、黎は胡乱に思った。
 

澪とその父は小埜の血統であるが、相応の力はない。
 

このままだと、澪の祖父で現当主である、小埜古人(おの ふるひと)で小埜家の稼業は途絶える。
 

小埜家は、陰陽師の大家、影小路の流れを組む陰陽師一族だ。
 

だが、それも抗えない時の流れか。
 

――恐らくはその使役が、黎を尾行(つけ)てきている。
 

真紅の血を吸ったことがバレたか?
 

いや、それならあの老人なら正面切って殴りこんでくるだろう。


(変に思われた程度か……)
 

外の空気がすきだ。

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