もう一度、名前を呼んで2

*悠唏*

学校に来ても授業に出ないのは変わらない。

紫蛇がなくなったことで平和になったのは実感しているが,それと授業は関係ないのだ。面倒なものは面倒。

前は藍那がちゃんと授業に出ていたから俺たちも出てたが,最近は藍那も何も言わなくなった。

教科書読んだらわかるからもういいや,とか言ってたな…
あいつ頭良すぎてつまんねえんだろうな…

藍那が留学した経緯なんかを思い出してしまった。あの時の俺は無力だった。



「そーいや藍那は?」

ゲームをしていた龍毅が顔をあげて音楽室内を見渡している。



「トイレ行ってくるって言ってたけど…遅いね」

「……」

「……」

「クソッ!探せ!」



バタバタと数人が走っていき,俺はすぐに電話をかけた。


「出ろ,早く……」


いつもはすぐに出る。早く出ろ…そう願うが藍那は電話に出なかった。

トイレだってそんなに何十分もかけるような奴じゃねえし…ああクソ!


油断していた。急にピリピリした空気が消えて平和になって,穏やかな日々に浸かりすぎていた。


なぜか藍那がある程度に喧嘩できることもあって最近は護衛を付けなくなっていた。トイレくらいなら,倉庫の外で遊ぶくらいなら,誰かと一緒に街に出るくらいなら…と。




「だめだ…GPS切られてる」


なんてことだ。それじゃあ確実に誰かに攫われたってことじゃねえか。

いったい誰が。紫蛇の残党がいたのか?



「探すぞ。僚は倉庫で指揮とれ,理流はここで。舜と龍毅は街に行け,俺は学校周辺探す。僚,藍那を見つけ次第連絡と保護,無理なようなら応援を呼べと全員に連絡してくれ」

「了解」


理流以外の全員が部屋を出て各々が藍那を探しに出た。無事でいてくれ…初めて倉本にさらわれた時の藍那の憔悴ぶりを思い出しながら祈った。


< 30 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop