もう一度、名前を呼んで2

*藍那*

パタパタと階段を下り,トイレに向かう。

校内はすっかり落ち着いていて,紫蛇を壊滅させたことでこんなに変わるんだなあと毎日思っている。


トイレにも1人で行けるようになったのはほんとに良かった

前は誰かしらがついてきてたから気恥ずかしいし嫌だったんだよね…


それを嫌だと言うと困った顔をされるのも気に入らず,かといってむやみやたらに心配をかけたいわけでもなかった。だからこうして校内なら1人で移動できるようになったのは本当に清々しい。



用を済ませて手を洗っていると,視界の端で何かが動いたような気がした。


ん……?


あたりを見渡しても誰もいない。人の気配がするわけでもない。


気のせいかな


視線を,目の前の鏡に映した瞬間だった。





一瞬で目の前が暗くなる。

口元には何かが当てられ,両腕は背中にまとめられた。

「アイナ・フジミヤ確保」

薄れる意識の中そう言う声が聞こえた。


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