クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「良かった。私、リュシオンに好かれていないと思っていたから」
「なぜですか?」

 今度はリュシオンが驚きの声を上げる。

「リュシオンは私に対してとても他人行儀だから。お兄様やお姉様への態度と全然違っているなと前から感じていたのよ」
「……そういうつもりは有りませんでした。レオンハルト様達へ気安くなってしまっていたのは確かですが」

 ならばお兄様達への態度が特別親しいもので、私に対する態度は普通だったと言う事か。

「それなら、これからは私にも親しみをもって接して欲しいわ。私もそうさせて貰うから」

 リュシオンの整った顔に戸惑いが浮かぶ。でも拒絶はされていはいない。私は勢い付いて更に要求を突きつける。

「呼び方もグレーテ様は止めて欲しいわ。これからはグレーテと呼んで」
「それは、非常に難しいです」
「どうして? お姉様の事はラウラ姫と呼んでいたでしょ? それなのに婚約者の私がグレーテ様じゃおかしいと思うわ」

 すぐさま切り返すとリュシオンは心底困ったように眉根を寄せてから小さな溜息を吐いた。

「分かりました。ではグレーテ姫と呼ばせて頂きます」
「敬語も辞めて。夫が妻に敬語なんて変だもの」
「……直ぐには無理です」
「分かった。それなら結婚式までには直してね」

 リュシオンは約束してくれなかったけど、言いたい事は伝えたので私は満足した。

 初めはどうなるかと思ったけれど、リュシオンは私との未来を前向きに考えてくれているようだ。

 姉の事が気にならないと言えば嘘になるけれど、過去に囚われず婚約者としてお互いの距離を縮めて行けたらいいと思った。
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