クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「……何が言いたいのですか?」
「思ったより賢かったと、そう言ってるのですよ」

 明らかに私を見下したその態度に、サウル王子の本性を見た気がした。

 この王子は穏やかで優しい人なんかじゃない。

 それにアンテス家にとって味方といえるかも分からない。バラークとの同盟の件だって、本当の事かも怪しくなって来た。

 とにかく、これ以上ここに居る意味がない。

「失礼いたします」

 サウル王子の情報が真実かは分からないけれど、それも含め今起きた出来事全てを、アンテスの城にいるお兄様に知らせなくては。

 身を翻しその場を離れようとすると、乱暴とも言える強さで腕を掴まれた。

「何をするのです?!」

 抗議を込めて声を上げると、私を拘束するサウル王子が冷笑した。

「姫の人物像は予想外だったが、この先の予定を変える気は無いのでね。早馬なんて出される訳にはいかない」

 サウル王子のその言葉と共に、周囲の暗闇から人が現れる。

 黒装束の夜の闇に溶け込むようなその人達は、明らかに晩餐会の招待客ではない。

「え? え? サウル王子、これはいったい?」

 それまで無言だったヘルマンが、高い声を上げながら、落ち着き無く辺りを見回す。

 その様子から、彼はこの事を知らなかったのだと分かる。

 私もヘルマンも、サウル王子に騙されたのだ。

 反射的に身を翻し逃げ出そうとする私を、サウル王子はさらにきつく拘束し、大きな布で目隠しをする。口元にも布を巻かれ、声を封じられてしまう。

 抵抗も通用せず何も分からないまま、私はサウル王子に連れ去られた。

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