Distance
顎を押さえながら寿士は、赤くなったであろう私の額を手のひらで触れた。
そして涙目を、握り拳で必死に我慢する私を、煩わしげに細めた目で見下ろし、短く息を吐いた。
もしも台詞をつけるなら、ったくしょうがねーな、手が焼けて面倒だな、と言ったような、辟易とした溜め息だった。
「しっかしお前、男の趣味変わったのな」
もう見えるはずないのに、寿士は村越さんが去った方角を眺めて言った。
「ま、まぁね。村越さんってほら、ガッチリしてて、頼り甲斐がありそうで。あ、そうそう!村越さん、柔道やってたって、強いんだって!」
「ふうん。俺だってジムで最近めきめきと筋肉たちの対話に目覚めてきてだな」
「は?なに言ってんの意味分かんないんだけど。どーせジムの女に会う口実でしょ?」
「おい、俺の体幹バカにすんなよ」
…してねーし。
七月に入ったと言えど、まだ夜風はひんやりする。
そろそろ部屋に入ろうと、玄関の鍵を開け、ドアを半開きにしたときだった。
「あ。わかった。」
古風なジェスチャーだった。寿士がグーにした手で、反対の手のひらをぽんと叩いた。
そして涙目を、握り拳で必死に我慢する私を、煩わしげに細めた目で見下ろし、短く息を吐いた。
もしも台詞をつけるなら、ったくしょうがねーな、手が焼けて面倒だな、と言ったような、辟易とした溜め息だった。
「しっかしお前、男の趣味変わったのな」
もう見えるはずないのに、寿士は村越さんが去った方角を眺めて言った。
「ま、まぁね。村越さんってほら、ガッチリしてて、頼り甲斐がありそうで。あ、そうそう!村越さん、柔道やってたって、強いんだって!」
「ふうん。俺だってジムで最近めきめきと筋肉たちの対話に目覚めてきてだな」
「は?なに言ってんの意味分かんないんだけど。どーせジムの女に会う口実でしょ?」
「おい、俺の体幹バカにすんなよ」
…してねーし。
七月に入ったと言えど、まだ夜風はひんやりする。
そろそろ部屋に入ろうと、玄関の鍵を開け、ドアを半開きにしたときだった。
「あ。わかった。」
古風なジェスチャーだった。寿士がグーにした手で、反対の手のひらをぽんと叩いた。