あの夏の続きを、今


やがて、セイジの家の前までやって来た。


「じゃあな、志帆。今度放課後にでも勉強教えてくれよ」

「えー、部活あるから無理だよー」

「じゃあテスト週間はどう?部活ないし」

「え?えーっと、そうだなぁ……」


私はてっきり「うるせーよ!」みたいな返事が返ってくるとばかり思っていたから、少し戸惑ってしまう。


「じゃ、特別に一日だけだよ」

「っしゃ!頭いい志帆に教えてもらえば、俺もバッチリだろ」

「さあ、どうだろうね」


私の返事が聞こえているのかいないの、セイジは家の前に自転車を止めると、そのまま「じゃ、また明日ー」と言って家の中へと入った。


それを見届けてから、私も家の方へと歩き出す。


────最近、こんなことが増えた気がする。


私が学校から帰っていると、後ろからセイジが追い付いてきて話しかけてくる────ということは1、2年生の頃も普通にあったことなのだが、3年生になってからそれが増えた気がする。


しかも、以前はセイジは私に話しかけてきてもすぐに一人で先に颯爽と帰ってしまっていたのだが、最近はこうして家の前まで一緒に帰ることが多い。


こういった変化に、私は多少は違和感を感じている、かもしれない────けれど、決して嫌ではない。迷惑ではない。


嬉しい、とまでは行かないが、セイジが幼なじみであることを差し引いても、「好きでもない異性」にこうやって話しかけられて一緒に帰るのは、嫌ではないのだ。二人で話すのは普通に楽しいと思うのだ。


────私から見た松本先輩も、こんな感じなのだろうか。


迷惑になってないと、いいんだけど。


そんなことをぼんやりと考えながら歩いていると、私はいつの間にか自分の家の前を通り過ぎてしまっていることに気が付いた。


────いけないいけない。慌てて自転車の向きを180度変えて、私は家へと戻った。

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