騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 




「まさに、獣ですね」


春は瞬く間に過ぎ去り、揺れる新緑がセントリューズに夏を知らせた。

美しく整えられた庭園の見える一室。そこでティーセットを手元に並べ、今日も主を相手に淡々と毒を吐くのはアンナだ。


「獣って、仮にも仕えている主の夫に対してその言い方はないでしょう……」

「では、野獣とでも言った方がよろしいですか?」

「どちらでも、変わらないじゃない……」

「そうですね。獣でも野獣でも、ルーカス様がビアンカ様を毎夜寵愛している事実は変わりません」


平然と言ってのけたアンナを前に、ビアンカは思わず赤面した。

ビアンカがセントリューズに嫁いできて早一ヶ月半。

夫であるルーカスがビアンカを寵愛しているのは、今や王宮内に仕える者たちの中では周知の事実だ。

 
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