騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 



「ハァ……」


ビアンカがセントリューズに嫁いでから早一週間。はじめこそ慣れない環境に戸惑っていたものの、なんとなく生活のリズムは掴めてきた。

開け放たれた窓からは春の温かい風が迷い込んできて、ビアンカの頬を優しく撫でる。

本当なら春の陽気に胸を躍らせ、テラスでゆったりとお茶でも楽しみたいところ。

けれどビアンカの心は、穏やかな春の陽気とは裏腹に、この一週間、戸惑いの色に揺れていた。


「ビアンカ様、溜め息ばかりついていると幸福が逃げてしまいますよ」


部屋の真ん中に置かれたアンティーク調のカウチソファーに身を預け、ぼんやりと宙を眺めていたビアンカにアンナが呆れたような声をかけた。

唇を尖らせながらアンナに目を向けたビアンカは、頬杖をついたまま、そっと眉根を寄せてみる。


「……だって、考えても考えても、わからないんだもの」


ビアンカの、溜め息の原因。それは今朝も早くから出掛けていった、夫のルーカスのことだった。

王立騎士団の騎士団長を務めるルーカスは朝が早い。

夜も遅くに帰って来る日もあるし、やはり騎士団長という職務は激務なのだろう。

 
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