届け───私の言葉
____ボトッ

……ん?あれ、なんか落とした?

もう少しで学校に着くところで、私はなにかを落としたようだ。

「あ…本だ…。」

私は大事な大事な本を落としていたらしい。

やだな、小説とか命よりも大切なのに。誰かに踏まれてなきゃいいけど。

私は少し来た道を戻り、どこかに落ちている本を探した。

「あった…!」

案外すぐ見つけられて、もう安心だ、と一息ついたとき、私の本を誰かが拾い上げた。

拾い上げた人は、珍しそうに私の本を眺めていた。

なんか、茶髪で高身長でピアスとかしてて制服も見事に着崩しているチャラい系の人だぞ。

どうしよう、私こういうときに限って人見知り発揮する。あんどコミュ障も発揮する。

いや、頑張れ私。大切な小説のためだぞ。あれ千二百円もしたんだぞ。

「あ…あのっ…それ、拾ってくださって、あ、ありがとうございます!」

私は意を決してその人に声をかけた。

どうしよう、沈黙。沈黙が流れてるけど。どうしよう。

なんとか言ってくれないのかな…!?私これ以上こんな空気に晒されてたら死にそうだよ…!

「…あ、これお前の?ごめん、勝手に拾っちゃった。はい、返すね。」

「あ、ありがとう…ございます。」

その人は見た目より怖そうな感じじゃなくて、チャラチャラした感じでもなさそうだった。

しかもネクタイの色が緑ということは、同い年ということだ…!なんという偶然!

……と、思ったのは私だけじゃないらしく…

「てゆか、お前も俺と同い年じゃん。敬語なんかやめてタメで話そーぜ。名前なんて言うの?」

「え…!?えっ、と…山崎沙那と申します!」

やばい、声裏返ったよ…。なんで自分の名前言うのもこんなに緊張しなきゃいけないんだぁぁぁぁ…。

「沙那?へぇ〜、いい名前だな。俺の名前は高橋昴。よろしくな。」

すばる…くん?は、そう言ってクシャッと笑った。


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