届け───私の言葉
私は今、男の人と一緒に歩いている。なんということか、こんな日が来るとは。

私なんかが、こんなキラキラオーラな人気者みたいな人のとなりに、立っていていいんですか…?

あれから何故かすばる君は、上まで一緒に行こうと言ってきた。当然、私に断れる勇気はなく、今一緒に校門をくぐっている。

どうしよう、会話がない。どうしよう、これだからコミュ障はダメなんだ。会話をなんとか探さなければ…!

「…なんで沙那そんなに緊張してんの?俺そんなに怖いかな…。」

え、待って、ちょっと、あの、いきなり名前呼び捨てですか!?レベル高すぎません!?

「あ、い、いや、緊張、というかなんというか。その、人と話すの慣れてない、から…。あの、ごめんなさない。」

「…ふーん、別にいいけどねー、俺は。これから仲良くなろーな。ほら、同じクラスだし。」

_______え?

え、同じクラスって、私とすばる君が?いやそれしかないか。いや、でも待て。そんなはずは…!

「ほ、ほんとだ…。」

そんなはずはあったぞ。本当にすばる君と同じクラスだ。

靴箱のところに張り出された大きなクラス発表の紙には、きちんと二人の名前が書かれていた。

別にいいけどさ、私なんかと関わろうとする人なんかいないんだし。

人見知りで、将来の夢も希望もない私になんか、どうせすばる君もすぐ飽きる。

それまでの辛抱だ。この人ちょっかいかけてきそうだから。我慢我慢。

って私、なんでこんなにすばる君のこと気にしてんの…?

まぁ、あれか、初めてというか、久しぶりに話した異性だからだよ。そうだよそうだよ。

「さぁて、じゃあ教室行こう。早く歩かねぇと置いてくぞ、沙那。」

「うん…。」

私はもう一度リュックを背負い直し、すでに階段の前にいたすばる君のとなりに並んだ。
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