夜空の下で星を見ながら
残念系主人公
ずっと前、私がまだ小学6年生だった頃、近所にある小川の土手で幼馴染みの男の子と一緒によく夜空を見上げたのを覚えている。

夏はベガ、デネブ、アルタイルから作られる"夏の大三角形"を。

冬はシリウス、プロキオン、ベテルギウスから作られる"冬の大三角形"なんてものも見た。

彼は決まって満面の笑顔で星座について教えてくれた。

私はそんな時間を幸せに過ごしていたんだと思う。

けれど、幸せなんてものは長く続かないのが当たり前。

小学六年生の冬、私は父親の転勤が理由で故郷から随分遠くへ引っ越した。

まだ幼かった私のわがままなんて母親は聞く耳を持たずに、「お父さんの仕事の事情だから仕方ないのよ」としか言わなかった。

そんな話ももう3年前の話。

今になってわかる。

幼馴染みの男の子の存在の大きさを。

きっと私は彼が好きだったんだ。

でも、この気持ちは行き場を無くしてしまった。

彼とはもう会えない。

そりゃそうだ。遠くに引っ越してしまったんだから。


明日から高校生としての生活が始まる。

それなのに、こんな昔話を思い出して涙を流しているなんて変な私だ。


運命だなんて言葉、私は信じてない。

運命があるのなら、私は引っ越したりしなかったんだから。

でも、もし本当に運命があるのなら…………

「もう一度彼に出会って、気持ちを伝える機会をください…………」

ひとり、自宅である一軒家のベランダで夜空に浮かぶ星に祈った。
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