強引社長といきなり政略結婚!?

「モーリシャス島バニラティでございます。お口に合ってよかったです」


多恵さんは嬉しそうに目を細めた。
紅茶好きが高じて、紅茶ソムリエなる資格を取った多恵さんは、毎日いろんなテイストのものを私たちに入れてくれている。どれも多恵さん自慢の紅茶だ。とにかくおいしい。


「そういえば、日下部さんの用事は急ぎじゃなかったんですか?」


スマホが通じないからといって、わざわざ出先にまで連絡をよこしたのだ。なにか急用だったんじゃないか。


「いや、月曜日でも十分間に合うことだったから。あいつはせっかちなんだ」


たった一度しか会ったことはないけれど、なんとなくわかる気がする。几帳面で段取りもよさそうな印象だ。


「私と一緒にいたことは日下部さんにも話したんですか?」

「そりゃあもちろん。邪魔するなとね」


どうしてそんなことを……。
これでまた、日下部さんに恨まれてしまう。
朝比奈さんはあっけらかんと言ったのだった。

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