強引社長といきなり政略結婚!?

そうしてゆかりちゃんたちとわいわいやっていると、入口のドアが開けられる音がして、「いらっしゃいませー!」と言いながら振り返る。

入ってきたのは、スーツ姿の男性だった。
どこかで会ったことのあるような気がしなくもない。
顔を見ながら、「おひとりさまですか?」と尋ねると、その男性は人懐こい笑みを浮かべた。


「汐里、久しぶり」

「……はい?」


立ち止まった男性とふたり、店内の真ん中で立ち尽くす。

……誰?
中学から大学まで女子校だった私には、男性の知り合いはいないに等しい。

すらっと背が高く、サラサラの髪に黒縁メガネ。若干たれ目の穏やかな表情。
記憶のどこにも、それに合致する顔は見つけられなかった。


「俺だよ、俺。浩輔、西野浩輔!」


……にしの……こうすけ……?
ぜんまい仕掛けがゆっくりと回るように、私の記憶回路が回る。

< 150 / 389 >

この作品をシェア

pagetop