強引社長といきなり政略結婚!?

日下部さんは、近くに停められた黒い車を指差した。
朝比奈さんの秘書にそう言われれば、断るわけにもいかない。自転車を店の前に停め、指示されたように黒い車の後部座席に乗り込んだ。

運転手がいないところを見ると、日下部さん本人がここまで運転してきたのだろう。彼も後部座席へと乗り込んだということは、車を出すわけじゃなく、このままここに留まるようだ。

ドアが閉められ、外の音が遮断される。
日下部さんとふたりきりの車内は、なんとも居心地の悪い空間だ。


「ひとつ、ご忠告申し上げておこうと思い、今日はここへ来ました」


日下部さんは私を見るわけでもなく、まっすぐ前に視線を保ったまま言った。
そんな姿勢に私は身構える。


「忠告、ですか？」

「社長の朝比奈とは、このごろずいぶんと親密にされているようですが、あまり深入りはなさらないほうがよろしいかと」


日下部さんの言っていることの意味がわからない。朝比奈さんと私とのことは、会社レベルでも進んでいる話じゃないのか。
藤沢ゴルフ倶楽部を傘下に収め、私と結婚すると。