強引社長といきなり政略結婚!?

なるほど。それでちょっとわかった気がする。人懐こくて、いつもニコニコして憎めなかった浩輔くんが、突然『別の男を想っている女を奪う快感もたまらない』なんて言い出した理由が。
半分、自暴自棄になっているんじゃないか。浩輔くんは、人からなにか奪うことに快感を覚えるような人じゃない。


「汐里様? 大丈夫でございますか?」


考えを巡らせていた私の顔を多恵さんが下から覗き込む。


「うん、私は大丈夫」


大丈夫じゃないのは、浩輔くんのほうだ。


「ところで汐里様、昨夜は朝比奈様のお宅にお泊りに?」


多恵さんが急に話題を変える。
それがインパクトの強いものだったから、脈が本当に音を立てたんじゃないかと思うほどドキッとした。


「ですが、朝比奈様は確かご実家にお住まいですよね? となると、ホテルでしょうか?」


首を左右に傾げて、多恵さんが尋ねる。

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